2007年に発刊された『作出のセオリー=天才アドレーアンに捧ぐ=』は、実に画期的な名著です。作出論でこれほど深く論が展開された著作は他に類を見ません。著者素野哲氏は、この掲示板でも幾度か氏の主張を取り上げた事がありましたが、残念なことに7,8年程前に急逝され故人となられています。
この本の発行者である当時の愛鳩の友社明神庄吾社長は本書を評して、後書きに次のような言葉を記されています。
● 種鳩論の核心の一つになっている「アイ・バンド」の指摘などピジョン・ビジネスに携わる業者たちにはいずれ厄介なお荷物になることだろう。昨年ベルギーに出向いたとき、世界的に著名な愛好家のカタログを瞥見して驚いた。代表鳩の全身の写真と一緒に目まで載せているのに、虹彩の外側はカットされているのだ。つまり、アイ・バンドの有無は写真からは判定できない。活字文化というのは恐ろしいものである。3年の連載の間に誰からともなく話が伝わり、地球の裏側まで真実は伝播しているのである。まがい物を扱う人間にとってこれだけ恐ろしい著述はない反面、レース鳩の性能について探究する者には貴重この上ないのが本書である。
明神社長が後書きで指摘しておられるように、本書は、アイバンド論という目の理論を中心に据え、ミューレマンス系やヤンセン系などの当代一流の銘鳩を使って実際に作り上げた銘鳩たちの画像を駆使して明快な理論が展開されています。氏をして「ピジョン・ビジネスに携わる業者たちにはいずれ厄介なお荷物になることだろう」、「まがい物を扱う人間にとってこれだけ恐ろしい著述はない」とまで記させたほどの直裁的で真摯な内容になっています。これまで理論としては存在していても、ほとんど公開されることがなかった領域まで踏み込んでいる名著だとイレブンは思っています。
現在連載している『Piet de Weerd 研究』では、ピートさんが「濃密な近親配合」の重要性を幾度となく強調していますが、本書では、そのことと同じ視点に立ち、更に深く理論展開されてます。そこで、『Piet de Weerd 研究』の重要な参考資料として、研究を進めていく考えです。まずは、親子配合、兄弟配合に関する記述を引用しておきます。
この引用の中で、特に下記の指摘が重要です。ピートさんも同じ観点でもこのことを述べていますし、「直仔×孫」「孫×孫」といった遠い関係にある鳩同士の近親の問題点を明確に述べている点は注目に値するところです。この記述からこの「作出のセオリー」では、Piet de Weerdの回想録の鳩理論を踏まえた理論展開がなされていることが伺えます。「モルダント(闘争心)」は、ピートさんの中心理論ですですから。
●1990年代に入る頃になると、親子掛けや兄妹掛けのいわゆる”インブリード”に対して近親の弊害を心配する気持ちはなくなっていました。極近親にしても大丈夫という自信さえありましたね。むしろ遠い関係にある鳩同士の近親の方が私の経験からいいますと、モルダント(闘争心)が無くなったり、鳩が小さくなるなど悪い結果を生む傾向があります。 |