もうひとつの重要な物差しは、虹彩の色である。 虹彩は瞳と無色の角膜の間の色輪である。また、角膜と虹彩の間に細くて黒い輪もよくある。
この若鳩でよく目立つ輪の名前は、フェルメイェンリング(Vermeyen Ring)と言う。色は濃いのか穏やかな方が良いのか難しい問題である。私はこれを特に問題とはしないが、カラフルな方が好きである。目の色とその濃さは色素沈着によるものだが、良い特徴であると言いたくても必ずしもそうとは証拠がない。ただ積極性がある特徴であると信じている。
ハンガリー鳩界の唯一の大家であるヤノス・ホルバットも濃い色の目を好んでいた。彼が書いた著作にも、沢山これについて記してあるし鳩舎でもその特徴が目立った。彼はいつも瞳の小さい、目の色が濃い、エネルギーが溢れる顔を持つ鳩を飼っていた。
ウィルヘルム・シュヴェールも書いている。鳩を観察する事は、いつでもその労力に値する。最初のレースの時は色々な目の種類が見える。しかしレースが続くにつれて。さえない目が段々減ってくる。結局、最後の一番困難なレースで篭の中に残っているのは、色の濃くはっきりした目である。国内品評会でも、短距離レース鳩を見るとよく無表情の目が目立つ。長距離レース鳩であればそんな事はないだろう。
ヤン・アーツ、ピート・デヴィールト、それにジョン・ランプレヒツは皆経験豊かな愛鳩家だが、彼らの意見を聞いてもやはり濃い目の色を好んでいるようである。
私も長年に渡ってスーパー鳩を注意深く観察して来たのだがやはり同じ意見で、良い鳩は絶対に濃い目の持ち主でないといけないと考えている。虹彩の中でそれぞれの色がちゃんと分かれている必要はない。つまり規則正しいカラーリングを見せなくてもいいと言う事である。虹彩の色の組み合わせは何であっても良いのだが、とにかく強度の色で真ん中から隅までが見えなくてはならない。
我々皆か好きな目はその色が段々溶けて一つになる様なものであろう。つまり絵描きのパレットの様なものである。こう言った鳩を私も飼った事がある。
ジェフ・シモンズのネーレとその素晴らしい娘のセーベスであった。彼らの作出能力はあまりに優秀だったので今15年が経っても、未だにその成果か私の鳩舎で見られる。無色の粒子によって色づけられた目をしている鳩か、結局黄色や孤色の目を持つ鳩と同じ様に優秀である可能性も勿論ある。
もう一つの種類として殆ど、或いは全く色素がなく、黒く見える目がある。こう言う目をしていたのが「ヨング・スチール」で、アンドレ・ファンブリアーナの下で、あっとごう問に世界的有名になった。前にも述べた様に、目の色はまず色素沈着に深い関係を持つ。色素が豊かであればあるほど良い事であって。故に我々は色の豊富な目を好むべきである。
目への血液供給が良いかどうか。これもまた成績を計る為の尺度である。これか分かれば一般の特徴の事もよく分かるであろう。
初めてこれについて研究を行ったのは、ドルヌとコールスの両博士で、物質分析と言う方法で、眼球の虹彩の外側表面が、積密に折り重なった色素粒と、異常に細くしなやかな細胞組織によって特徴付けられている事を発見した。その細胞組織の下にあるのは、数え切れない程たくさんの毛細、血管で、殆ど虹彩の外側に集まる。毛細血管か色素粒の問を通して表面まで出て来るので、虹彩はいつも粒だらけのように見える。
嘴を太腸の方向に向けて鳩の目を観察すればこの現象を我々は自分の目でも確認出来る。鳩の目の虹彩の表面がざらざらしていればしているほど、毛細血管が多いのである。これはまた良い血液供給と言う事になる。
何十年もの間、自分のエース鳩や人のチャンピオン鳩を観察して来た結果、やはり一番良い形は瞳の横側から虹彩の外側まで同じ厚さを持つ細胞組織だと思う。エース鳩を観察したところでは、80%は粒子が沢山あって、20%はそんなに粒子がない。
もう一度言っておくが、鳩スポーツと言うのは絶対的ルールかないのである。例えば美しい目だけ、または意志力だけとか筋肉質か良いと言う特徴だけでは、エース鳩は成立しないであろう。エース鳩と言うのは、やはり5つ、6つの優れた特徴を持たねばならない。
我々がいつも考えないといけないのは、どの特徴かどの割合でエース鳩で見られるのかと言う事である。つまり粒子の多い虹彩を持つエース鳩が、80%を占めているのであれば、この特徴は絶対良い成績をもたらす様な特徴に違いない。現実的な愛鳩家は必ず良い成績と結びつきのある特徴を重視する。
例えば鳩の目の瞳が大き過ぎる場合は、成功の確率か0.5%に過ぎないであろう。色に乏しく。粒子があまりないような目の場合、確率力20%に上がったとしても未だ少ないと言えるであろう。我々の鳩舎は狭いので、どの鳩にも同じような気配りか出来ない。そこでやはり成功の確率の多い特徴を重んじなければならないであろう。
赤色の目と言うのは色素ではなく、毛細血管が色素を通して表面まで出て来た証拠で、普段は黄色である色素粒に影響を与えた結果である。
血液供給については次の事が確かに言えるであろう。目の外側の供給が良くてもそれでは足りない。目の全体がそうでないといけないのである。血液供給か良いと必う事は粒子の数ですぐに分かる。目の血液供給か良ければ、身体全体も恐らくそうであろう。
レース能力はいつもバイタリティーと深い関イ系があると言う事はずっと前にも述べて来た。バイタリティーは調子と同じ事である事が言えるであろう。つまりバイタリティーたっぷりの鳩は、レースの為に一所懸命訓練をやって来た鳩と同じ様に見えるのである。
バイタリティーの土台は絶え間ない平均以上の有機体の血液供給である。血液供給の量が多くなればなる程、調子も良くなるし逆でもそうである。
我々は鳩の口を見て、その中にある粒子の数や色の事で血液供給が良いと言う事が分かれば、鳩全体もそうだ、この鳩は良い成績が収められるのだと想定しても良いであろう。
弱い鳩、または最近とても大変なレースを飛んだ鳩の場合は時々目が脱色する事がある。輝きが無くなり、身体全体か疲れ果てて血液供給か悪化した事の証拠である。血液供給があまり良くなくても、鳩は勿論レースで優勝する事か出来るであろう。
しかし、それは短距離レースや簡単なレースのみの場合であろう。短距離レースの有数の血統であるヤンセン鳩(近親交配か特徴)の場合でも、脱色の目が割と目立つ。それはなぜかと言うとこの愛鳩家達が、2〜300Kレースにしかこの鳩を使わないからである。
この時、モルダント、気性や知性が最も重要な特徴となる。忍耐力や耐久性と言う。血液供給と深く関わるような特徴は2〜4時間のレースの 場合は、あまり重視しなくても良いであろう。
アイサインと言うものもあるが、これは瞳と虹彩の間の脱色の1/4,.1/2.又は完全な円である。それを観察して信じられない程大袈裟な結論を出した人もいれば、全然無視する人もいる。
ベルギーとオランダの有名な愛鳩家は異口同音に、完全な円かある鳩の方がレースより種鳩として、価値かあるという事を主張しているようである。
私は30年間続けて、自分の鳩についての情報を全てノートに執った。完全な円のアイサインを持つ鳩の名前を、全部リストにまとめた。そのリストをよく調べると、完全な円かある鳩で優れた成績を持つ鳩は勿論いた。しかし、半円しかない、またはアイサインが全くない様なエース鳩も居たのである。完全な円を持った鳩の中でとても成績の良い鳩もよく居たが、この鳩は種鳩としてはあまり良くなかった。これを検討した結果、私はアイサインにあまり注意を払わなくても良いと言う結論を出したい。それは当然である。
こんなにちいさな要素か、様々な特徴から成り立つレース能力の有無を絶対左右する筈がないのである。あまり鳩の遺伝学について知らない人にとって、この事実は多少勇気付けになるであろう。
鳩の目のもう一つの特徴は、所謂フェルメイエンリングであろう。
フェルメイェン氏はアントワープ生まれで、初めてこの輪の存在を指摘したのである。 フェルメイエンリングと言うのは、細くて黒い輪で目の色が付いている部分を、無色の角膜から分けるのである。
これを一番簡単に発見出米るのは濃い眼色を持つ若嶋を光りに照らして見る時である。成鳩の場合、このフヱルメイエンリングの色の度合いか非常に鳩の調子を判断する時に役に立っている。血液供給か良ければ良い程、鳩の調子もよい訳である。同様に血液供給が良い時、フェルメイエンリングは普通の鼠色から濃い黒に変わるのである。このフェルメイエンリングは、シーズンの最初から最後まで非常に傾れるコンディション判断の手段である。
最後に目についてもう一言。鳩の顔を前から、つまり嘴の力から見ると、両方の目が完全に見えてくる。その際、梟(ふくろう)に似ている様な鳩は、鳩舎の最もインテりな鳩に間違いない。自分で確認されたい。
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