 愛鳩家の私たちは、おそらく、一般の人々以上に遺伝に関する経験を多くの持ち、従って遺伝に関する知識や考えを多く持っているとイレブンは思っています。今、遺伝学の最前線で熱い議論を呼び起こしているこの「エピジェネティクス」は、ブラッドスポーツとも云われる「レース鳩」の世界にいる愛鳩家の私たちにとっても見逃すことの出来ない新展開を引き出す重要な鍵になっていくのではないかとイレブンは考えています。
僅か数日前、手元と取り寄せていた書籍に目を通していた時、「獲得遺伝子」の文字が飛び込んできました。そして、その文章を中に「エピジェネティクス」という聞き慣れない言葉に初めて出会いました。
今まで全く知らなかった「エピジェネティクス」という語の意味するところを知るために「検索」を使って、手当たり次第に情報を収集してくなかで、遺伝学の領域で使われているこの言葉は、とてつもなく大きな発見ではないかと云うことが次第に分かってきました。
早速、中尾光春著『驚異のエピジェネティクス』と仲野徹著『エピジェネティクス−新しい生命像を開く』を注文していたら今日届きました。今はまだざっと目を通しただけですがどうも、これはとんでないほど大きな発見のような気がしてきました。
この「Epigenetics」という発現システムの存在を踏まえると今までスッキリしたいなかった数々の遺伝上の謎が解かれていくのです。 そして、レース鳩の様々な理論に当てはめると幾つもの符合する事実が思い起こされるのです。
この新連載『イレブンの「Epigenetics」」研究ノート』では、遺伝学について全くの門外漢のイレブンが、レース鳩の系統確立という観点から、最新の遺伝学の最大のテーマとなっている「Epigenetics」への研究の足跡を綴っていく内容です。主に、「Epigenetics」関連の文献を調べ、その理論の理解に必要な内容やレース鳩の系統確立論に関係があるような記述の抜粋・引用となる思います。可能なところは考察も加えていく予定ですが、基本的にはイレブン自身の研究の為のコーナーと考えていただければと思っています。
興味がある方は目を通していただければ幸いです。ご意見等もレスいただければ励みになります。
随時、文献の引用を加えていく計画です。
この研究ノートの最初に次の言葉を掲載して今後の研究の励みにしていきたいと思います。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇−Column 「次世代の研究を拓く」−中尾光春ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アレイ(※1)技術や高速シークエンス(※2)という先端技術が進歩して,遺伝子やエピゲノムに関する生命情報が蓄積しつつある.今まさに,私たちの生命と病気の解明について本格的にチャレンジできる時が来ている.つまり,研究そのものが,最も面白く,まさに旬のところにある.若い学生や研究者が自由な発想と気概をもって取り組まれることを期待したい.
ある公開講座において,[どうしたら.やりたいことが見つかるのか]と,ひとりの高校生が研究者側に尋ねた.自分探しの途中にある学生の多くがもっている疑問であろう.年配の研究者が先輩から聞いたとして,次のように話された.[本気でやれば,好きになる.本気でやれば,できることがある.そうして,本気でやっていると,助けてくれる人が現れる」.
きっかけは何であろうと.好奇心をもったことに専念していたら,ひとりの研究者になっていたという感じだ.私たちか生きる現代は先の見えにくいものであるが,起こってもいないことを先回りして心配して,挑戦しないことは避けたい.むしろ,「何とかなる」の精神で当たってみることで,将来への活路が拓けてくる.(中尾光春『驚異のエピジェネティクス』P206より引用)
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| ■イレブンの「Epigenetics」」研究ノート■001◇◇◇◇中尾光春「まえがき」・「あとがき」◇◇◇◇◇【出典:中尾光春『驚異のエピジェネティクス』、2014年6月1日発行、羊土社、)】 ◇◇◇◇◇ イレブン 2020年10月31日(土) 1:40 |
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 最初に「まえがき」と「あとがき」を引用します。
短い文章ですが、ここだけを読んでも「エピジェネティクス」が遺伝学上いったいどんな位置にある発見であるかというあらましが分かってきます。
中尾光春教授がここで取り上げている日本人の身体の変化の事実は、多くの人が素朴に一度は疑問に思っていたことではないでしょうか。
イレブンも口にこそ出しませんでしたが、ずいぶん以前から不思議に思っていたことです。
こうした素朴な疑問の解明をゲノム解析という最新の遺伝学の見地から説明してしまうことが出来るのがこの「Epigenetics」」が切り開いてくれた遺伝の世界なのです。
そして、その研究は、まだ始まったばかりなのです。この「スネークパパの部屋」もようやく最新の遺伝学情報に接点を持つ事が出来たようです。面白くなってきました。
以下に、抜粋した文章を掲載していきます。
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●子どもや若者の中に,顔立ちは端正,背が高く足長で,スタイル抜群の人がいる.そういう人か増えてきたという感覚である.テレビや映画の中の特別な存在ではなく,ふつうに街を歩く人,ふつうの学生,言わば,私たち自身においてである.
●人類の歴史の中で,こんなに短い間に,目に見えるように,ヒトは変わるのだろうか.もしもそうだとすると,現代人は,ヒトとして大きな変化の時代に生きているということである.
●生来もっている「生命のプログラム」とは何であろうか.本書は,この究極の謎に迫ろうとするものである.人類が,その進化の中で,長い時間をかけて獲得してきたDNAを「ゲノム」とよんでいる.ヒトがヒトであるために,私たちは,共通のゲノムをもっている.これが,ゲノムは設計図であるといわれるゆえんである.ヒトのゲノム上には,約2万5,000個lの遺伝子があることがわかきた.|ゲノム」を辞書に例えるならば,「遺伝子」はそこに書かれた単語のようなものである.ところが,単語を無闇やたらに並べても意味をなさないであろう.辞書の中から単語を選んで,文法に従って,意味のある文章をつくることが肝要なのである.
●そう考えると,ゲノム上にある遺伝子を選んで使うという,「遺伝子の使い方」が重要なのではないか.どんなタイミングや状況で使うか.どういう組合せで使うのか.そして,この遺伝子の使い方が変更されることがあるのだろうか.これこそが,「エピジェネティクス」とよばれる新しい考え方の核心である.
●ヒトがヒトであるためには,このプログラムは,安定に“維持"されなければならない.その一方で,生活環境に応答して,柔軟に“変化"する必要もある.しかも,プログラムに異常が起これは,病気の発症につながる可能性もあるのだ.このように,「生命のプログラム」とは,維持と変化が表裏一体になったものである.あたかも流れる水が澄んでいるように,変化することで安定に維持されているようだ.
●生命体は,基本的に「種の保存」という方向性をもっている.もっていると意識に上らないほどに,本能に近いものである.地球上に現存する生物は,子孫を増やすことで,繁栄してきた.これができなくなると,その種は消滅していく。
●生活環境の変化に応じて,もっとも急速に変化を遂げるのが,生物の外観と生殖に関するものといわれている.
●生物種は,環境因子に適応するために,ゲノムの印づけを変えることで,<エピジェネティック>に変わるのではないか.こう考えると,私たちは,新しい生活環境,脳にインプットされた情報などに応じて,自分自身,そして次の世代を質的に変化させる可能性があるのかもしれない.例えば,親の脳が希望する形質を,自分の子のゲノムに刷り込む.そして,子世代もその方向に適応していく,ということだ.これに要する時間は,案外,長いようで,短いのかもしれない.
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■リンク■熊本大学発生医学研究所「細胞医学研究所」 http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/bunya_top/medical_cell_biology/ |
| ◇◇◇◇「まえがき」◇◇◇◇◇【出典:中尾光春『驚異のエピジェネティクス』、2014年6月1日発行、羊土社、P3より引用)】 中尾光春 2020年10月31日(土) 3:03 |
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旧交のある小児科医が集まったときに,ひとりかこう切り出した「最近,若い人のスタイルが変化してきた?」幾人かかうなずいた.おそらく,そう感じている方も少なくないのであろう.まもなく戦後70年,徐々に身体的な変化が目に見えるようになってきた気もする.ものの見方というか,考え方もそうかもしれない.実際に,日本人は変わってきたのだろうか.
子どもや若者の中に,顔立ちは端正,背が高く足長で,スタイル抜群の人がいる.そういう人か増えてきたという感覚である.テレビや映画の中の特別な存在ではなく,ふつうに街を歩く人,ふつうの学生,言わば,私たち自身においてである.
人類の歴史の中で,こんなに短い間に,目に見えるように,ヒトは変わるのだろうか.もしもそうだとすると,現代人は,ヒトとして大きな変化の時代に生きているということである.
こう考えている時に,文部科学省による平成24年度「学校保健統計調査」の中に,興味深いデータを見つけた.次のページのグラフを見てほしい.8歳,11歳,14歳,17歳の時の体格〔上から身長,体重,座高〕について,祖父母世代(55年前),父母世代(30年前),子世代(現在)を比較したものである.この全国的な調査によると,男女ともに,体格の平均値は,祖父母,親,子の順に高くなっている.確かに体格はよくなってきている.
やや意外であったのが,この体格の仲び幅は,祖父母世代から父母世代の間で大きく,父母世代から子供世代の間では,少し伸びた程度であることだ.しかも,成長がほぼ完了する17歳の時では,父母世代と子世代の問の差はほとんどなくなっている.スタイルのよさは,子世代の若者に目立つと思っていたが,実は,その父母世代が獲得した特徴というわけである.祖父母から父母の世代間で起こった変化が,父母世代から子世代に伝えられている.掘り下げてみると,これは科学的にどうしてなのだろう.
もう少し私たち自身のことを考えてみよう.食べる,動く,眠るというのは,いつもの活動であるが,私たちの身体の中では,目には見えないところで,数多くの細胞や遺伝子が必死に働き合っている.1つ1つの細胞が小さな生命をもっていて,この細胞がすべて合わさったものが私たちひとり分の生命になっているのだ.何とも不思議な現実である.
「ヒトは,単細胞だった?」その通り,元をたどれば,誰でも1個の細胞であった.1つの受精卵として誕生し,それが60兆個もの細胞に増えて,ヒトひとりの身体がつくられている.そして,成長の中では,大体に同じ時期に,立って,歩いて,言葉を聞いて,話すようになる.学習しながら,知識や社会性を段々に身につけていく.
それでは,人生の終わりについては,どうであろうか.いわゆる平均寿命が示すように,多くの人がその生涯を終える大体の時期がある.その終わり方も,病気を患うとするならば,がん,心疾患,肺炎,脳血管疾患が主な要囚になっている.要するに,人生の中身は違っても,ヒトとしての生涯の枠組みは,誰でもおおむね同じと考えられるのである.
このように,ひとりひとりに,生まれてから生涯を閉じるまでのラフな予定が準備されている.これを「生命のプログラム(プログラム・オブ・ライフ)」とよぶことにしよう.細胞の集合体としての私たちを運命づけるものである.生命あるものは,一生の間に基本的なイベントがいつ頃起こるのか,大まかに決まっているようだ.このプログラムというものは,いわば,自分の過去であり,現在であり,これからの未来のようでもある.
私たちの「生命のプログラム」は,生まれつきにすべて決まっているのか? 実はそうではないらしい.食事,運動,嗜好などの生活環境によって,この内なるプログラムは徐々に書き換えられることがわかってきたのである.その際に,プログラムが誤って書き換えられると,メタボや糖尿病のような生活習慣病,がん,脳の病気の発症につながるという考え方が有力になってきたのだ.つまり,このプログラムがどのように働くかで,私たちの在り方が決まってくるというのである.こう考えると,先に述べた日本人の体格の変化について,祖父母から父母の世代間で起こったプログラムの変化が,父母世代から子世代に伝えられたのではないかと想像することもできる.
では,生来もっている「生命のプログラム」とは何であろうか.本書は,この究極の謎に迫ろうとするものである.人類が,その進化の中で,長い時間をかけて獲得してきたDNAを「ゲノム」とよんでいる.ヒトがヒトであるために,私たちは,共通のゲノムをもっている.これが,ゲノムは設計図であるといわれるゆえんである.ヒトのゲノム上には,約2万5,000個lの遺伝子があることがわかきた.|ゲノム」を辞書に例えるならば,「遺伝子」はそこに書かれた単語のようなものである.ところが,単語を無闇やたらに並べても意味をなさないであろう.辞書の中から単語を選んで,文法に従って,意味のある文章をつくることが肝要なのである.
そう考えると,ゲノム上にある遺伝子を選んで使うという,「遺伝子の使い方」が重要なのではないか.どんなタイミングや状況で使うか.どういう組合せで使うのか.そして,この遺伝子の使い方が変更されることがあるのだろうか.これこそが,「エピジェネティクス」とよばれる新しい考え方の核心である.
これから,私たちがもっている「生命のプログラム」について,一緒に考えてみたい.まだわかっていないことが多いので,1つの結論にまとまるものではない.しかし,世界中で最先端の研究が大容量で進んでいるので,驚くべき結果がいつも発表されている.そのため,私たちの生命観に触れる情報やアイデアが満ち溢れている.本書が,生命の不思議な真実について分かち合う一助になれば,この上ない喜びである.
2014年4月 中尾光善
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| ◇◇◇◇中尾光春「あとがき」◇◇◇◇◇【出典:中尾光春『驚異のエピジェネティクス』、2014年6月1日発行、羊土社、P206より引用)】 中尾光春 2020年10月31日(土) 21:39 |
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□あとがき□
本書では,私たちの「生命のプログラム」について,“エピジェネティクス"という研究の最前線をお話ししてきた.新しい分野で日進月歩の途中ではあるが,生命と病気の本質にかかかることから,その全休像の理解に迫りたいと思ったからである.ヒトがヒトであるためには,このプログラムは,安定に“維持"されなければならない.その一方で,生活環境に応答して,柔軟に“変化"する必要もある.しかも,プログラムに異常が起これは,病気の発症につながる可能性もあるのだ.このように,「生命のプログラム」とは,維持と変化が表裏一体になったものである.あたかも流れる水が澄んでいるように,変化することで安定に維持されているようだ.
やや脇道にそれるが,生命体は,基本的に「種の保存」という方向性をもっている.もっていると意識に上らないほどに,本能に近いものである.地球上に現存する生物は,子孫を増やすことで,繁栄してきた.これができなくなると,その種は消滅していく.
.・私たちの日頃のおしゃれ,美容,ヘアースタイル,ファッションなど,自分の見た日やその魅力を追求する背景には,種の保存が働いているとみてよい.ヒトはその知能が高く,趣味や趣向,美的感覚,仕事柄,年齢など装飾する要素は多いが,その根本の幾分かには,種の保存がかかわるであろう. 植物・昆虫から魚類・鳥類,そして哺乳類に至るまで,ほぼ例外なく,雌も雄も相手を惹きつけるように進化してきた.
鮮やかな色,奇抜な形,行動パターン,鳴き声,匂いなど,様々な手段を使ってアピールするのだ.生命体にとって,然るべく優先度が高いのは,種の保存,すなわち,子孫を残すという生殖にあるからである.このため,生活環境の変化に応じて,もっとも急速に変化を遂げるのが,生物の外観と生殖に関するものといわれている.
生物種は,環境因子に適応するために,ゲノムの印づけを変えることで,<エピジェネティック>に変わるのではないか.こう考えると,私たちは,新しい生活環境,脳にインプットされた情報などに応じて,自分自身,そして次の世代を質的に変化させる可能性があるのかもしれない.例えば,親の脳が希望する形質を,自分の子のゲノムに刷り込む.そして,子世代もその方向に適応していく,ということだ.これに要する時間は,案外,長いようで,短いのかもしれない.本書のまえがきで,子世代,父母世代,祖父母世代で,現代人は変わってきたのかと問いかけた.「生命のプログラム」が変化したならば,日本人の体格は変わるであろう.しかも,その変化は,世代を超えて引き継がれるであろう.確かな回答を導き出すには,もうしばらくの時間と研究が必要のようである.
本書をまとめるうえで,羊土社の間馬彬大氏に貴重なアドバイスをいただきました.心から感謝の意を表します.また,植田奈穂子氏,波羅仁氏,川治豊成氏,熊本大学発生医学研究所の細胞医学分野の各位から多くの意見を受けましたことに深謝いたします. 中尾光善
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