イレブン様 大変貴重な資料を公開して頂けきありがとうございます。
素野哲さんは、このブログではじめて知りました。
色んな角度から目の理論を研究されていた方が 日本にいらっしゃったことに大変興味があります。
この方は、なりより自分の理論にまったく迷いが ありません。
おそらく、人知をこえたゾーンに立ち入り物事の 本質を見極める特殊な感性の持ち主の方だと思い します。
素野さんの考えでは、アイバンドの存在こそがマストで、次に油性粒子と呼んでいるものの存在がより良い 物を求めた時のベターな条件に繋がるとおっしゃって おります。そこが一番重要なところですが、私なりに 確かめていきたいと思います。
このような理論が今後も展開されて行きますよう 宜しく御願いいたします。 |
素野哲さんの理論について イレブン 2021年4月25日(日) 9:56 |
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素野哲さんの理論については、丁度イレブンがこの掲示板を立ち上げ、レース鳩の飼育を再開したころ、『愛鳩の友』で連載が開始されていて知りました。この掲示板のバックナンバーの最初の頃にその時話題なったことが書き残されています。
素野さんは、残念なことに2013年9月29日、満66歳をもって永眠されました。
素野さんが亡くなられて8年経とうとしていますが、イレブンは、もっと素野さんが書き残された理論を振り返っても良いのではないかと思っています。そうした考えから、これからも、話題に取りあげていく考えです。
素野さんのすごいところは、躊躇なく、重要な問題にたいしてハッキリ考えを述べられているところです。サウスタイム様がおっしゃるように「おそらく、人知をこえたゾーンに立ち入り物事の本質を見極める特殊な感性の持ち主の方」というところが至る所にこの著書の記述に見られます。
そこで、お人柄や考え方が分かりやすい「前書き」と「本誌連載『作出のセオリー』を終えて」をここで引用抜粋しておきますね。 |
■■◇前書き◇■」(出典:素野哲著『作出のセオリー=天才アードレアンに捧ぐ=』、2007年7月31日発刊、愛鳩の友社,P10~P13) 素野哲 2021年4月25日(日) 10:01 |
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○前書き○ 経済水準からすると、今日の日本は世界的にかなり裕福になりました。文明の発展と共に若者達はモバイル、ゲーム、ネット文明に浸り、戦後生まれの私など物の無い時代にうった世代からすると、過ぎた時間が懐かしく思われます。
同好の士である愛鳩家がないに高齢化し、楽しい鳩談義と肉体の哀えが話題となる今日この頃です。「愛鳩の友」さんとの御縁があり、2年間に亘り連載を続けて参りましたが、この間に全国の皆様から沢山のご質問、ご意見を頂き心から感謝する次第です。
鳩の趣味においてレースは勿論、作出における方法論について様々な試行錯誤か行われ未だ法則として確立されていないのが現実です。そんな中で、私独自の「作出のセオリー」として一冊に纏めるに当たり、改めて思うことかありました。拙著の副題にも込めました天才アドレアーン・ヤンセンヘの憧憬と深い尊敬の念がセオリー確立への大きな原動力となっていたということです。
アドレアーンの凄さというのは自分で鳩を作ってみてわかります。ああ、よく出来たなと思った時にフッと思う。毎年、そういうヒナは出来るのですか…、私自身が満足するようなそんなトリをアドレアーンは日常的に作っていました。本人は前面に出て有名になることはありませんでしたか、たとえばポンテーローザ、アイヤーカンブの05カンプハイスやヴ″ンダーフォスケなどのオリジンを作っていると思うと尋常ならざるものを感じます。
また。「八大銘鳩」というのは総て選手鳩です。これらの鳩から、当たり前のようにアドリアーンは銘鳩を作り上げていく。選手鳩からすごいトリを作るには私の交配セオリーから言いますと優れた種嶋を作るための種鳩が必要となってきます。それを持っているからこそ出来ることでありますか、容易に真似の出来ることではありません。また、アドレアーンが科学的に交配論を考えていたわけでもなかった。生まれつき身についていた、まさに鳩の天才でした。自身のセオリーか確立される中で偉人なる愛鳩家アドレアーンヘの私の思いは深い感謝の念へと繋がっていきました。
ようやく導き出したセオリーとは言え、わずか、50年の経歴の私見に耳を傾けていただき、読者の皆様には本当に有り難い事と感じ入っております。いずれにしましても愛嶋家に忘れて欲しくない事は、自分が与えた新しい命を、一羽一羽大切に慈しんで欲しいという事です。より良い鳩を作るため、私も必要以上の淘汰をして参りましたが、愛鳩家として、これで良かったのか振り返れば寂しくも思われます。
種鳩の選定そして理想とする配介の計画を立てている時は愛嶋家にとって至福の時ではないでしょうか。そんな時、心の片隅に拙説を思い浮かべて頂ければ嬉しい限りです。卵で生まれ。無事に孵化した時から愛鳩の一生が始まります。将来のチャンピオンを大切に育てて欲しいものです。
そうすることから、私達は鳩文化をより高みに持ち上げていけるのではないでしょうか。私達か自信を持って、若者にこの鳩飼育を通じた楽しみ、喜びを体験するように勧めることが出来れば、世代を超えてどれ程素晴らしいコミュニケーションとなることでしょう。どんなに発達した文明でも、人の心を満たす事は不可能なのです。子どもが大人と一緒に楽しめるスポーツは鳩レースくらいだと思います。ヨーロッパでは親子、家族で鳩を飼育する文化が根づいております。誠にうらやましい限りです。
私も子どもの頃、鳩界の先達に親切に教えを頂き、基本となる鳩知識を得られたものです。今でも心から感謝しております。時の過ぎるのは早く、我が身がその立場にいたるとは思いがけない事です。これからも諸先輩に恥ずかしくない様、日々研讃を積み重ねていきたいと心に言い聞かせる次第です。
2007年7月7日 素野 哲
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■資料:「鳩の持つ因子群分類表」素野哲 イレブン 2021年4月25日(日) 10:14 |
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素野理論の基本となっている「因子群分類表」です。ここに素野理論の卓越した慧眼が光っていると思っています。 |
■■◇本誌連載「作出のセオリー」を終えて−読者からの反応と筆者の所感−◇■」(出典:素野哲著『作出のセオリー=天才アードレアンに捧ぐ=』、2007年7月31日発刊、愛鳩の友社,P279~P284) 素野哲 2021年4月25日(日) 10:16 |
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○読者の興味は作出より飛ばし方に
――連載を三年間、執筆する中で読者の皆さんから様々な問い合わせや反論が素野さんにあったと思います。振り返っていかがですか。
■素野■北は北海道から南は鹿児島まで、結構。問い合せはありました。記述されている内容については、初めて聞いた話だとか、それはどういうことかという類いが多かった。たとえば、最初の内はブリーディングの問題というより。羽色の組み合わせについてとか、羽色と目の色との関係についてのことなどの質問を受けました。
私自身としては出来るだけ解かり易く、テーマでもある作出のセオリーを展開してきたのですが問い合せの内容は、もっと初歩的なことが多かった。でも、なによりも感じたのは。読者の皆さんが鳩に熱心であることです。連載記事中には私の自宅の電話番号など載せていないのに、調べて電話をかけてくる人も少なくなかったですね。
――素野さんは幼少の頃、鳩を飼い始める時にたまたま良い先生と出会われて多くを学び、今日に至っています。でも、そういう機会に恵まれずこの趣味を始めるにあたりマスターしなくてはならない基本的なことを学ばずにきてしまった。そういうケースは非常に多いと思うのですが。
■素野■それはあるでしょうね。そのために鳩レースで勝つことばかりに気持ちが向いていて、問い合せも技術的なテクニックに関する内容が多くなる。どこか、切羽詰まっていると言うか・…必要に迫られているということなのでしょう。レースで直接飛ぶのは人間ではなく鳩ですから、まずは作出が大事なテーマになってくるはず。愛鳩家の皆さんも解かっていると思うのですが、どうしても飛ばし方に重心を置いてしまうようです。
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○作出の「研究」から「競翔」へ □ 2021年4月25日(日) 10:20 |
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■素野■作出について話す中で、部分的にしか言っていないことでも、飛ばし方に絡んでくると思うと気になる。たとえば、私の場合、作出前は種鳩を雄。雌に分離します。その時に与える餌ばトウモロコシだけ。理由は換羽を綺麗に上げるためであり、一定のコンディションをずっと維持させるためです。また、作出中はアサノミだけだと、そう書いただけで読者は敏感に反応しました。その理由は卵の産みが早まり、親鳩が疲れないと書いているのですが…、それはともかく、選手鳩の普段の餌ばどうなんだということになる。
選手鳩についても単品主義ですよと私か応えると、じゃあ、どうして配合飼料ではいけないのかと言う。配合飼料を撒き餌にすると、各々の鳩の好みがあって、仕上り具合に違いがでる。そうなると、訓練をした時などは鳩は三つのグループに分かれて帰って来てしまう。単品で与えれば、一緒に帰って来ますね。後は・…舎外で追ってはいけないと書けば、追わなければ鳩は飛ばないのではないかと反論する。でも実際はそうじゃなくて飛ぶんだと言って、あらためて説明するわけです。
――今はもう廃刊になっていますが、並河靖さんが『作出と競翔』という単行本を出版されている。あの本自体、愛鳩の友誌が創刊された時に執筆していただいたのですが、その時のタイトルか「作出の研究」でした。多分、これは秦野さんが今、話された事と同じ局面を並河さんも迎えられたのではないかと思います。じゃあ、飛ばし方はどうすればいいのかと。読者からの質問が続出したのではないでしょうか。結局、部分的に連載で紹介した後、単行本では「作出と競翔」という一大テーマになったという経緯があります。
■素野■飛ばし方については難しい。私なりに論理立てて、こうだと言っても、多くの愛鳩家は自分の飛ばし方を変えようとはしません。たまたま変えた人が非常にいい成績を挙げても、それを見て自分もやってみようとは思いません。
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O愛鳩家の頑固と自己確信 □ 2021年4月25日(日) 10:23 |
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―趣味の愛好家には頑固なところがありますね。恐ろしく頑固なところが(笑)。成果を出したいという気持ちは同じなのですが、それじゃあ、他人のアドバイスに従い、自分もやってみようと。なかなかそういう気持ちにはならない。
■素野■ウチのハンドラーもよく言っています。私の所に来る愛鳩家は、同じ事を聴いていても、みんなやっていることは違う。結局、長く鳩をやって経験を積んでいる人ほど、自分のやり方を変えるのが恐いんですよ。
―たとえばレースで優勝することがあるとする。優勝鳩だから飛ばした本人は、その鳩を好きになります。そのイメージが強く残って、鳩はこういうものでなくてはならないという自己確信を持つ。同様に飛ばし方でも、何度も優勝するなど実績を収めていると、そのやり方は正しいと思う。その自己確信と似ているような気がします。
■素野■多くの愛鳩家は、選手鳩を作る種鳩がいいトリに見えているようです。結果が出るからいいというイメージを持つ。だから、選手鳩鳩舎にいい選手鳩を作る種鳩を入れる傾向があります。選手鳩を作る種鳩の長所を選手鳩に求めてしまうということです。連載でも図で示しながら、鳩には種鳩を作る種鳩、選手鳩を作る種鳩、そして選手鳩と三つのタイプがあることをお話しました。これを理解していないと、目的には沿わない鳩を作ってしまい失敗してしまいます。
こういうこともあります。私の鳩舎に収まるミューレマンスの鳩は種鳩を作る種鳩です。この鳩を見た人が、そのタイプをイメージしながらヒナを引いたところが、選手鳩を作る種鳩タイプが生まれた。イメージの鳩とは違うというので人にあげてしまうのですが、その鳩の子が相手の鳩舎で飛んでしまった。飛ばした本人は大切な鳩ということで、もう他の人には渡しませんね。 |
○毛か立つ”トリは内臓がいい □ 2021年4月25日(日) 10:25 |
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―「愛鳩の友」誌に羽毛の一部が立っている鳩が掲載されています。これには何か意味があるのでしょうか。
■素野■私の鳩舎には羽毛が立っているトリはたくさんいます。一部とは言わず、それだらけのトリがいっぱいいますよ。この状態を見て、ある人は病気だと言う。それで大笑いしたことがありました。そうじゃないんですね。内臓のいいトリはそうなります。
一枚の羽根の真ん中あたりがキュッと立っている。そういう選手鳩については、それが身体全体に立った時、ベストーコンディションになっているということがわかります。私達は〃毛が立つ”と言っている。毛が立つトリは非常に大事です。この事は、内臓のいいトリを飼っていない人には判らないでしょう。判らないから、そういうトリを見た時にヘンだと、病気だと思ってしまう。
―比較的、毛が立ちやすい部分というのはあるのですか。
素野立つ部分は決まっていません。全面的に出るのがいいですね。鳩の良し悪しを見極める時に、最初はアイバンドが太いかどうかを見ます。その上で毛が立っているならば、その鳩は大事にしたい。シルバーカップとチャンピオンカップで総合シングルに入り、92年の合同会銘鳩賞を獲得していた。ウチの”フレンドシップ”なんかもそのタイプでした。状態が上がってくると毛が立っていました。
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○トータルで強くなるために □ 2021年4月25日(日) 10:26 |
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―改めて思うことですが、鳩を飛ばしていく上での初歩的なことは実際、誰もがぶつかっている。50歳代で鳩を飼い始めた人がいて、購入される時は色々いい鳩を見ているので、鳩を見る目は肥えている。ところが、じゃあ、どう配合するのかとか、どう調教して成果に結びつけるのかとなると五里霧中にある。そういう問題はたくさんありますね。
■素野■いい選手鳩を作るには、そのための種鳩がいて…、その種嶋を作るための種鳩がいる。さきほども触れましたが、3つのタイプがある。種鳩用の種鳩なら背中の盛り上がった戦艦タイプ、選手鳩作出用の種鳩は背中から肩にかけて紡錘形を描く、選手鳩は背中が平らで、たとえるとタンカーです。目的に沿って鳩を見極めそれぞれの長所、短所を見ていかなければいけません。ところが、自分はどこに軸を置くのかがはっきりしていない人が非常に多いのか実態です。
たとえば、選手鳩を求める人が種鳩を作る種鳩を見た時には欠点だらけ。逆に。種填用の種鳩を主軸にすれば選手鳩は欠点だらけです。つまり、先ほども失敗例を挙げましたか、。二つのタイプのポイントをしっかり身につけなければ、トータルでは強くなれないということです。
―しかも長続きしない。大事なポイントはそこにありますね。だいたい強くなる人は何かのタイトルを獲ると、その前後5、6年は強い。ところが、ひとたび後退してしまうと、その強さは蘇らない。そういうテースはとても多いと思います。いい種鳩に巡り合っても、それを。再現することができない。そこに重要な問題があるということになります。
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O指導に忠実、大きな成果 □ 2021年4月25日(日) 10:29 |
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―素野さんの指導を受け、忠実に守っで取り組んでいる方もいますね。また、実に見事な成果を挙げている。
■素野■ある夫婦か鳩レースを楽しんでいます。スタートはそれまで持っていた種鳩をチエ″クして、問題があると判断した鳩を除き、スタ″フを揃えたところから始まりました。親を超える直子が生まれたなら、その親も必要ない。飛んだら、その子どもから始めなさいと私は言っています。そうしないとグレードアップしていきません。
私のセオリーにそって容赦なく鳩を選別していったものですから、相手は家へ帰ってから一晩、泣いたそうです(笑)。配合について指導し、飛ばし方についても話しました。成果はすぐに出ました。支部優勝やシングル入賞、総合レベルでも上位につけるようになりました。
―この御夫婦の場合は、自分達は何も知らないという前提で学習されてきたことが良かったのでしょう。
■素野■この春も好調ですね。500キロでは支部のワン、ツー、スリーを独占し、4位鳩とトップとの差は1時間です。まだ、自動入舎システムは使っていないので昔ながらの打刻で、3羽くらいしか打たないと言ってます。その3羽がトップースリーでした。 ―3年間に亘る連載を振り返り、またお話しを聴きながら、改めて思うことがありました。とにかく素野さんの観察や、経験の総量というのは膨大で物凄いものがある。根っからの鳩好きであり、好奇心がなければ出来ないことです。それに裏打ちされ、理論化されたのが「作出のセオリー」だったということですね。
改めて総括いたしますと。まず陽性因子、陰性因子を作出論の基軸に据える。それ自体、卓抜なことですか、交配のメソッドをより具体的に展開するために、引きつづき優性、中間、劣性因子を第2の基軸にもってくる。レース鳩においてはひたすら劣性因子を愛好家たちが追究してきた帰結としてレース鳩自身の劣化をもたらすという指摘は鳩界への「警鐘」であると痛感いたしました。
(以上、引用抜粋)
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