今話題にしているサークルオブアダプテーションを含む目の理論が登場したのは、実に100年以上も前のことです。関口龍男先生によると、レース鳩研究の古典的名著とも言うべき1912年発行の”Methode Rationnelle de Selection et Daccouplement”の著者、フェリス・ジーゴーとアンリー・ジーゴー父子がこの輪について初めて研究発表したとされています。
このことを関口龍男先生(※左画像)は自著「鳩と共に七十年」の「良鳩の選別法」という章の中で「眼による選別」という項を起こして詳述されています。そこには、「サークルオブアダプテーション」という語はでてきません。「コリレーション」「アイサイン」という語で解説が展開しています。しかし、C/Aの存在を念頭に置いて読むととても意味深い文が各所に登場します。
ともあれ、まずは、その原文を引用しておきます。
□眼による選別□
良鳩の眼は、ものめずらしげに見える表情豊かな眼であると同時に、知性に満ちた閃きがある眼である。
眼の瞬膜の運動はすばやく、光の強弱に応じて調節されている。
現代の鳩は、5種の異なる鳩の交配により誕生したのであるから、鳩の眼の色彩によって良否を決定することは出来ない。
鳩の眼の色は、これ等の祖先の鳩の眼の色を現しているのである。同じ親鳩から生まれた同色の眼の色では、濃いものが一番仔であるが、体格は二番仔の方が良いのが普通である。
1900年以降になって、鳩の眼の瞳孔の周囲に細い環があることが発見されて話題になった。それ以来、この環があるかないかによって、鳩の良否が決定づけられた。そして、この環はコリレーションと名付けられた。
フェリス・ジーコーとアンリー・ジーコーの父子は、この環について研究発表した。
鳩の眼を見ると、色の付いた輪をを二個見ることが出来る。瞳に近い輪を光彩の第1の輪と称し、外側の輪を光彩の第2の輪と呼ぶ。コリレーションは、瞳孔を直接包むほか光彩の第1の環まで広がっている輪である。眼を形成する輪の中で最も狭い環であり、色は明るい灰色から黒い色まである。規則正しいコリレーションは細く二重の環に見えるが、これは完全な形のものである。
コリレーションは、不規則な形をしているものが多く、ひずんでいたり、途中で切れていたり、幅が一様でなかったりしていて、この特徴は鳩の嘴の方向に向かったところに明瞭に観察することが出来る。ある系統の鳩の中には、肉眼では一見コリレーションが無いように見える者のあるが、この場合は、光線に当てるか拡大鏡で見れば明瞭に見ることが出来る。
一般に、銀眼の鳩はコリレ−ションは、一番鮮明に見ることが出来る。
◇ケージャー大尉のアイサインによる選別◇
英国のT・ケージャー大尉は、1938年以来、コリレーションに地就いて研究を始めた。
彼は幸運にも1940年から、陸軍の軍鳩部隊長として勤務することになった。彼はその6年間の勤務中に約3万羽の鳩のコリレーションに就いて研究し、その結果、コリレーションをアイサインと命名することにした。彼は退役後、アイサインを研究するために鳩の雑誌の編集者となり、同僚の研究者ビショップと共に研究を継続した。
アイサインが、鳩の帰巣能力と、コンディッションの良否の判別に、確実性を持っていると証明されたのは、ルートンで開催された特別品評会であった。この品評会の検査の総点数は25点であったが、ケージャー大尉は、アイサインの優れた鳩には、10点を加算することにした。
その結果、主として長距離(1000キロ)鳩が賞を獲得することになった。この品評会で注目されたのは、若鳩クラスで、外観のあまり良くない小柄の鳩に最高点が与えられたことだった。この鳩は、ルートン地方の若鳩レースで優勝した鳩で、鳩の所有者は大尉の検査の的確さを試すために、故意に翔歴をかくして出品したのであった。
以上のようなことがあったため、アイサイン説は信用に値すると立証された。ケージャー大尉の研究によれば、アイサインは、遺伝的に劣勢の要素を持つものとのことである。したがって、優秀なアイサインを持つ雌雄を交配しても、同様なアイサインを持つ仔鳩は生まれないし、それ以上に優秀なアイサインを有する仔鳩も生まれることは少ない。
しかし、逆に、あまり優秀でないアイサインを有する雌雄から、優秀なアイサインが生まれる場合が存在する。
研究の結果、四番の雌雄から、アイサインを有する仔鳩は一番か二番生まれるだけである。
20年間アイサインを研究している鳩舎で、アイサインを有する仔鳩は、その鳩舎で生まれる仔鳩の数の半数である。
1940年の英国のレースで、上位入賞した数鳩舎が、1945年には最低の成績であったのは以上の理由にほかならないと、ビショップは述べているが、鳩の系統の価値を否定するものではないので誤解しないで欲しい、と彼は付け加えている。
色彩のあるアイサインは、普通濃い眼の色に対して優性である。ケージャー大尉は、5万羽の鳩のアイサインを研究した結果、長距離鳩は必ず色彩のあるアイサインを持っていると発表している。
色彩のあるアイサインを持つ鳩はごく少数しかいないが、長距離鳩の証明ともいうべきもので、この研究の成果は、長い年月と莫大な費用と努力とを費やして、ついに求めることが出来た秘密の鍵えあると、大尉は述べている。
アイサインの中で、希にみるのは、黄色味がかった緑色と紫色である。アイサインの無い鳩には優勝は望めない、と彼は言っている。
アイサインは、鳩のコンデションを支配するもので、レース中の鳩が最高のコンデションに進みつつあることを示すものである。
以上(『鳩と共に七十年』P151〜P154より抜粋)
さて、「古今東西、愛鳩家は目を見る」という名言を残されている関口龍男先生は、この4ページにわたる記述にどんな思いを込めておられたんでしょうね。イレブンには、何度読んでも、たくさんの言葉を慎重に省略された不思議な文章に思えます。
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